JIS X 8341-3:2010ファーストレビュー(3)

2010.08.22

  • 2010年8月22日
  • 8月20日に改正・公示されたJIS X 8341-3:2010

    3回に分けてお届けしてきた「JIS X 8341-3:2010ファーストレビュー」も今回で最後。今日は改正JISを特徴付ける3つ目のキーワード「アクセシビリティ・サポーテッド」についてお話します。

    アクセシビリティ・サポーテッド – ユーザーの利用環境を踏まえたコンテンツ作り

    JIS X 8341-3:2010の規格票の目次を見ても、「アクセシビリティ・サポーテッド」という言葉は見つかりません。今日お話する内容は、規格票の「附属書A(参考)この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方」についてのものです。

    「アクセシビリティ・サポーテッド」をひと言で言うと、

    ウェブコンテンツを作るときには、そのコンテンツの利用者が使っているブラウザや音声読み上げソフト、点字ディスプレイなどがサポートしている技術を、サポートしている使い方で使いましょう。

    という考え方です。「なんだ、そんなの当たり前じゃないか。」と思う方もいるかもしれませんね。そう、当然といえば当然ですね。

    「技術非依存」が起こす問題点

    ではなぜ、この「当たり前のこと」がJISに書かれているのでしょうか。それは、JIS X 8341-3:2010が「技術非依存」だからです。

    JIS X 8341-3:2010の箇条7では、ウェブコンテンツのアクセシビリティを確保するために必要な要件を「達成基準」として規定しています。そしてそれぞれの達成基準は、(X)HTMLやCSSなどのウェブコンテンツ技術に依存しない書き方で記述されています。

    個々の達成基準を満たすためにどの言語(XHTMLやCSSなど)、どの技術(FlashやSilverlight、PDFなど)を使うか、またその具体的な実装方法は、ウェブコンテンツの制作・開発の責任者に任されているのです。

    そこで問題になるのが、「どの言語、どの技術をどんなふうに使ったらアクセシビリティを確保できるかわからない」ということです。

    この問題を解決するための考え方が「アクセシビリティ・サポーテッド」というわけですね。

    例から学ぶ「アクセシビリティ・サポーテッド」

    ここでひとつ例を挙げてみます。

    例:画像への代替テキスト

    アクセシビリティの基本、画像への代替テキストです。画像に代替テキストを付与するとき、HTMLやXHTMLではimg要素のalt属性を用いるのが一般的です。日本で広く普及している音声読み上げソフト、点字ディスプレイは、このalt属性をサポートしています。PC-Talkerなどの音声読み上げソフトもalt属性の値である代替テキストを読み上げます。

    しかし、例えば写真の説明文をlongdesc属性を用いて記述したらどうでしょうか。日本におけるほとんどのブラウザや音声読み上げソフトは、longdesc属性をサポートしていません。したがって、longdesc属性を用いたやり方では、JISの達成基準を満たすことはできないことになります。

    鍵を握るのは「アクセシビリティ・サポーテッド情報」

    さて、2010年8月現在の日本において、ブラウザや音声読み上げソフトは、ウェブコンテンツ技術にどの程度対応できているのでしょうか。この情報を提供してくれるのが、「アクセシビリティ・サポーテッド情報」です。

    「アクセシビリティ・サポーテッド情報」は、個々のウェブコンテンツ技術が持つアクセシビリティ機能について、ブラウザや音声読み上げソフトの対応状況を検証した結果の一覧です。日本ではJIS X 8341-3:2010の公示とともに、ウェブアクセシビリティ基盤委員会のウェブサイトで公開されています。

    アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報 2010年8月版

    JIS X 8341-3:2010ファーストレビュー、いかがでしたか? 改正JISは歩き出したばかり。これからこの規格をどのように噛み砕いて、どのように具体化して、どのように広めていくか、これからの課題になります。Cocktailzでも、今後JISをわかりやすく解説していく予定ですのでお楽しみに。

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