みなさま、あけましておめでとうございます。2011年が始まりました。毎年お正月には、今年の目標や抱負、テーマなどをあれこれ考えることにしています。「今年はどんな年にしようかな」と想像することはとても楽しい作業です。
今年最初のViewpointでは、Cocktailzが今年注目しているテーマや、今年実現していきたいことについてお話します。
スマートフォンやタブレット端末のアクセシビリティ
アップルのiPhoneに代表されるスマートフォン。昨年の秋から冬にかけて、NTTドコモ「Galaxy S」やKDDIの「IS03」も登場し、一通り出揃いました。また昨年12月にはソニーやシャープが相次いで電子書籍リーダーを発売。2011年はこういったスマートフォンやタブレット端末、電子書籍が本格的に注目を集める年になります。
Cocktailzでは2011年、これらの機器やサービスのアクセシビリティ普及に取り組んでいきます。特に、次の点にフォーカスをあてていきます。
- 端末やアプリの音声読み上げ機能
- 現在、音声で利用できる携帯電話はNTTドコモの「らくらくホン」のみです。3GS以降のiPhoneにはVoice Overという音声読み上げ機能が標準搭載されていますが、漢字の変換がうまくできないなど、課題もあるようです。その他の機種については音声機能はありません。
- 文字の拡大や色の反転
- 私のウェブの使い方でもご紹介したように、弱視の人の中には、文字を拡大したり、色を反転して黒地に白い文字でパソコンやウェブを利用している人がいます。
- タッチパネルの操作性
- 多くのスマートフォンや電子書籍リーダーでは、タッチパネルが採用されています。タッチパネルは画面を見ることを前提としたインタフェースです。どこを触っても同じように平坦なこのインタフェースを視覚障害者が使うにはどうしたらいいか、研究していきます。
マーケティングの視点を取り入れる
アクセシビリティに限らず、障害者向けの機器やサービス、または福祉全般を考えるとき、「お金のことは言ってはいけない」「無料で提供されるべきだ」という声を聴くことがあります。
しかし、私はこの考え方は現実的ではないと考えています。
ウェブサイトにしても、ソフトウェアにしても携帯電話にしても、それらを創るのは「人」です。多くの人が長い時間をかけて考え、デザインし、さまざまな作業を行うからこそ、これらの製品は出来上がります。人が動けばお金がかかるのは当然。アクセシビリティをボランティアでやるには荷が重過ぎるし、責任も曖昧になってしまいます。
これまで、アクセシビリティは「まず国がやるべき」「利益向上を追求する企業としては踏み出せない」といわれてきました。もちろん国や地方自治体がアクセシビリティに取り組むことは不可欠ですが、より生活に密着した商品やサービスを提供しているのは民間企業です。私としては、多くの民間企業においてもアクセシビリティに取り組んでいただきたいと思っています。
そのために考えなければいけないことは「コスト」と「メリット」。
アクセシビリティに取り組むためにどんな体制を作り、どんなプロセスで、どんな作業が必要なのか。またそれにはいくらの費用が必要なのか。アクセシビリティに取り組むことで、どのくらいの顧客増につながり、いくらの利益向上が見込めるのか、その利益はかける費用に対して妥当なのか。
Cocktailzでは、今すぐに上の質問に答えることはできません。アクセシビリティ業界全体を見渡しても、スパッと答えられる人は決して多くないはずです。Cocktailzでは2011年、このような素朴で本質的な疑問に応えられるようにノウハウを蓄積していきます。
つながりを創る
上の2つを実現するためにどうしても必要なのが「人のつながり」です。
それも、これまでアクセシビリティとはそれほど縁がなかった、スマートフォンに関わる人、マーケティングに関わる人とのつながりを創る必要があります。
またすでにスマートフォンを使っている障害者にも、どんな使い方をしているのか、どこが便利で、どこが不便なのか、いろいろお話を聴いてみたいです。
2011年、どんなつながりを創れるのか、またそのつながりによってどんな楽しいことが起こせるのか、今からワクワクします。
みなさま、本年もCocktailzをどうぞよろしくお願いします。