ウェブアクセシビリティ試験の前に確認しておきたい5つの言葉

2011.10.27

ウェブコンテンツのアクセシビリティに関するJISであるJIS X 8341-3:2010が改正されてから1年と少し経ちます。自治体や企業のウェブサイトではJISに基づく試験結果が公開されたり、アクセシビリティ方針の策定に向けてロードマップが示されるなど、取り組みが始まっています。

しかし、すでに公開されているアクセシビリティ試験結果やアクセシビリティ方針を見ていると、JIS X 8341-3:2010への「適合」「準拠」「配慮」などの用語が誤って使われている例が見られます。中には「AAへの対応を目標に作成されました」というあいまいな表現がされているウェブサイトもありました。

「適合」「準拠」「一部準拠」「配慮」「配慮し試験」といったJIS X 8341-3:2010への対応度を表す用語は、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が作成した「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2010対応度表記ガイドラインで定義されていますので、それぞれの用語の意味や使い方を確認しておきましょう。

JIS X 8341-3:2010に「適合」

「JIS X 8341-3:2010に適合」という表記はとても強い表現です。この表現を用いるには、ウェブコンテンツが以下の3つの条件を満たしていることが必要になります。

  1. JIS X 8341-3:2010の箇条6の規定を満たしていること。
  2. 目標としたアクセシビリティ達成等級に該当する箇条7の達成基準を満たしていること。
  3. 上の2.を満たしていることを、箇条8にある「試験方法」にしたがって試験を実施し、適合性評価活動により適合を保証すること。

「適合を保証する」ということですから、かなり強い表現であることがわかります。ウェブサイトがJIS X 8341-3:2010に適合するためには、JISの規定上、「認証」と「自己適合宣言」という2つの方法があります。

認証
認証とは、工業標準化法第19条に基づいて、認証機関によって認証を受けることです。
自己適合宣言
自己適合宣言とは、ウェブサイトの運営者や制作者がJISの要件を満たしていることを確認し、適合を宣言することです。「JISの要件を満たしていることを確認する」ための規格としてはJIS Q 1000などがあります。

しかし現時点で、JIS X 8341-3:2010への適合を認証できる機関はありません。つまり、現時点では認証によってウェブサイトをJIS X 8341-3:2010に適合させることはできず、自己適合宣言によって適合を宣言するしかありません。

JIS X 8341-3:2010 に「準拠」

「JIS X 8341-3:2010 に準拠」は、ウェブコンテンツをJIS X 8341-3:2010に従って制作し、試験を行って、目標とするアクセシビリティ達成等級に該当する達成基準をすべて満たしていることを示すために使用します。この表現を用いるには、JIS X 8341-3:2010の細分箇条6.1で定められたアクセシビリティ方針の公開と、8.3で定められた試験結果の表示を行う必要があります。

また、目標とアクセシビリティ達成等級に該当する達成基準をすべて満たしていない場合には、「一部準拠」という表現を使うこともできます。この場合、満たすことができない達成基準とその理由、準拠に向けたスケジュールを示すことが求められています。

「適合」と「準拠」の違いは、自己適合宣言ができるかどうか、という点です。「準拠」の場合は自己適合宣言を行うことはできません。現時点では「準拠」を目指して取り組むのがよいでしょう。

JIS X 8341-3:2010に「配慮」

「JIS X 8341-3:2010に配慮」は、ウェブコンテンツを制作する際にJIS X 8341-3:2010を参照した、参考にしたというときに使う表現です。この表現を用いる場合には、目標としているウェブアクセシビリティ達成等級、参照した達成基準の一覧を表示します。

また、JIS X 8341-3:2010への準拠に向けて取り組む中で試験を実施した場合、試験を行っている段階ではJISに準拠しているかどうかまだ判断できないので、「JIS X 8341-3:2010に配慮し試験」したと表記してもよいことになっています。この場合には、細分箇条8.3で定められた試験結果を表示します。

どの用語を使うときにも必ず必要なのは「アクセシビリティ方針」

「適合」から「配慮」まで、どの表現を用いる場合にも、目標とするアクセシビリティ達成等級を含むアクセシビリティ方針の公開が求められています。アクセシビリティ方針がどんなものかについては、例えば、「みんなの公共サイト運用モデル(総務省)の「付属資料1 ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」に解説がありますので参考にしてください。

また、これらの表記を用いてJIS X 8341-3:2010への対応度を示す際には、上記の「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2010対応度表記ガイドラインの定義による表記であることと、ガイドラインのURIまたはリンクを記載することも忘れないようにしましょう。

アクセシビリティ試験は、皆さんのウェブサイトの現時点におけるJISへの対応度を把握するためのステップです。用語を正しく理解して使うことは、取り組みのスタートラインを組織全体としてそろえるためにも大切ですので、しっかり確認しておきましょう。

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